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の間妻子 閉(へい)門。屋敷の口々 釘(くぎ)付にして戸びらに樫(かし)の木
丸太。十文字にやりちがへ大 釘(くぎ) 鉸(かすがい)うらかゝせ。ひつそぎ竹にて高
垣(かき)付。乱杭(らんぐい)打 ̄ツたる世の掟(おきて)見るめもいぶせくいま〳〵し痛はしや
北の方籠中の鳥のうき思ひ。一子房若の手を引て門の影
にてうかゝへは。往来(ゆきゝ)の貴賤(きせん)立つどひ。是々此屋敷が腰ぬけ侍。
鷹巣(たかのす)の帯刀太郎 閉(へい)門のざま見ぐるしい。あの落書(らくしよ)見よ〳〵と
ゆびざしあざけり読(よむ)哥に。恥しらず何国(いづく)で武士を帯刀が。
つらのかはむけ平国の太刀。出来た〳〵よい口にやりおつた。是見よ
爰にも又一首。鷹巣も鼠の巣(す)やら子をおゐて。穴浅まし
の親の逃ざま。鼠とはよふいふた御蔵より下されし。御知行盗の
米の封。舛落しにかゝらふぞと笑ひどよめき通りけり。聞に付
ても北の方悲し共口惜共思ひ乱れておはせしが。なふ房若。父御は
弓馬を嗜(たしなみ)て誉(ほまれ)有武士なれ共。弓矢の冥加につきはてかゝる
不覚を取給ふ。其恥を返り見てよもながらへてはおはすまし。され共