翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: 模範解答付きコレクション1

紅葉狩剱本地 - 翻刻

紅葉狩剱本地 - ページ 53

ページ: 53

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やゝ有て帯刀。《割書:ヲヽ|》思ひかけぬは道理〳〵。妻子の手にかゝりしは。責(せめ) ても天のめくみとしれ。かたるもめんほくなけれ共。某ふかくの名を とる事 臆病(おくひやう)に似て臆病ならず。彼祝言の供先無二無三に 切かけしを。諸任がわざと心し。只一筋に御太刀を大事にかけ。 前後をわかず落程に物にさそはる心地にて。そこ共しら ぬ山々を二三日はさまよひしか。漸(やう〳〵)夢(ゆめ)のさめたるごとく。始て驚(おどろ)く かひもなし。此云わけは私ごと。五十歩をもつて百歩を笑ふとかや。逃るは 同じ逃る也。帯刀太郎広房かつらかひ拭(のこ)ふても出られずじがい せばやといく度か柄(つか)に手をかけしが。日本 不双(ぶさう)の宝の御太刀。朽(くち) はてん勿体(もつたい)なさ。浮世にまだ〳〵ながらふか心底思ひやつてたべ。 今は近郷の国伊吹山の麓(ふもと)。久作といふ土民(どみん)の家にかくまはれて 日を送る。此久作は御身もおぼへ有べし。先年家に奉公(はうこう)し。沢と いふ腰元と密通(みつつう)して欠落(かけおち)せし。九郎といひしわつはかこと。むかしの 恩(おん)を忘れもせぬ。夫婦が誠頼もしく御太刀を預(あづけ) ̄ケ置く。《割書:サア|》片時(へんし)