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もはやく房若をつれ行。太刀を受取惟茂に参らせ。始
終(じう)打あかし歎(なげき)なば仁心ふかき惟茂卿。品よろしく奏問(そうもん)あり
鷹巣の家を立。房若武門をつがん事 疑(うたがひ)なし。此ことくはしく
しらせ置心やすふ腹(はら)切らんと。非(ひ)人にやつし来りしにやしきは
釘付戸しめられ。塀(へい)切やふりし某を盗人と思ひ心はしかき
長刀。房若が働(はたらき)あつはれ帯刀が妻子成ぞ嬉しや死後(しご)に
案(あん)じもなし。やれ夜明も近付外へもれては詮(せん)もなしとゞめを
さいて一足も。急げ〳〵といふ声も喘(すだき)せぐりて玉の緒(を)も引入
ごとく見えければ。北の方涙にくれ。御太刀さへ有からは御身の
うへはいひ分(わけ)たつ。いかに姿かはればとておつとを見ちがへ手にかけて。
何とながらへあられふぞなふ房若。父の敵は母成ぞ寄てきれと
泣給へば。今はの眼をくはつとひらき。《割書:ヤイ|》うろたへ者。武士すたつた
おつとを指殺([さ]しころ)して。あの世 忰(せがれ)世にたてうといふ性念(しやうね)はなく。共
にしんで房若を誰がもり立て家はつぐ。今の間に夜があけ