翻刻!江戸の医療と養生

コレクション: 模範解答付きコレクション1

紅葉狩剱本地 - 翻刻

紅葉狩剱本地 - ページ 55

ページ: 55

翻刻

御とがめの塀(へい)は切やふり。見ぐるしき此ざまを御所の役人 検非違(けびい) 使(し)共に見付られ。恥に恥(はぢ)をかさぬるが房若つれてはやい そげ。詞をそむかば生々世々妻でない夫でないともだゆれ ば。《割書アヽ:|》是々何 ̄ン の詞をそむかふぞ。房若おじやと出んとすれど 後がみ。思ひ切かねすみかねあふみの国がどつちやら。伊吹山 とは何国ぞと。口にくと〳〵くどきごと涙が足を引戻す。房 わかもうろ〳〵と戸じめし門を押て見て。爰が明ねば 出られぬとかこ付泣こそ哀なれ。《割書:エヽ|》塀のやぶれがめに見へぬ かぐどんながきめとしかられて。なく〳〵くゞる四つばいはてゝ親しらぬ ゑのころ【注①】や。母もつゞいて出給へはなふ〳〵是々。とゞめをさいてく れぬかとゞめをさせとゞめをさせ。《割書:イヤ|》もうそれはゆるして下され かし。なふ曲(きよく)もない【注②】苦痛(くつう)させんといふことか。夫婦のよしみ頼む〳〵と くるしめば思ひ定て立帰り。刀おつ取涙ながら日比ねんずる 観世音(くはんぜおん)。われ世の中に有らんかぎりはたゞたのめ。御 誓願(せいぐわん)あや 【注① 犬の子。いぬころ。】 【注② つれない。情けない。】