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児(ちご)桜花のちりけ【注①】や筋かい【注②】や赤(あか)子にすへてもあつからず。ちゑ
なひ子には智(ち)を生し子のなひ女中は子をはらむ。此もぐさの
ゐとくには時をゑらはず日をきらはず思ひ立日に人神(にんじん)なし。土
用【注③】八 専(せん)【注④】かまひなし前(ぜん)三後七つゝしみなし灸した夜ても恋
衣 夜着(よぎ)の下から手を入て。せゝり起(おこ)すにふつつかとひねりも
くさのなまやいと跡もうぐはす【注⑤】痛なし。引 灸(きう)【注⑥】禁(きん)灸【注⑦】たゝりなし
養生(やうじやう)やいと押(おし)やいとくすし入らずの御重宝捨るとおもふて
只六銭。巾着(きんちやく)のかはきり【注⑧】こらへれは年中の後薬(のちくすり)めしてござれと
売立る。弁舌(へんぜつ)からに上下の旅人 皆(みな)家〽づとにともとめけりあゆみほ
つれしわらんづ【注⑨】や。房若はすご〳〵とおしよぼからげ【注⑩】にやぶれ笠。見世
先に立やすらひ【注⑪】手をのばして。艾(もぐさ)の袋ひつつかめば万とらがはした
なく。あれとつさま乞食(こじき)がもぐさぬすむぞや。すりめやらぬととんて
おり小 腕(かいな)ねぢあげ。見世の物かけて取。道中の小 鳶(とんび)。かさねて爰へ
うせうかとあらき風にも当ぬ身を。握(にぎ) ̄り こふし七 ̄ツ八 ̄ツ うんといふほど
【注① 「ちりけ」或は「ちりげ」=灸点の名。項(うなじ)の下。ぼんのくび。子供の諸病には、ここに灸をすえる。】
【注② 「筋違」=背中の一部で、灸をすえる場所。小児の風邪や胃腸病予防に効果があるとする。】
【注③ 陰暦で、立春・立夏・立秋・立冬の前各十八日間の称。】
【注④ 八専=壬子(みずのえね)の日から癸亥(みずのとい)の日までの十二日間のうち丑辰午戌の四日を間日(まび)として除いた残りの八日をいう。】
【注⑤ 「うぐは(わ)ず」 「うぐう(燌)」は、灸のあとが腫れ、膿みただれること。】
【注⑥ 腫物、痔漏などの患部に蒜(ニンニク)・韭(ニラ)・生薑・味噌などを載せた紙を敷、その上に艾を置いて灸をし、紙を引き去って患部を温める方法。】
【注⑦ 体の、ある部分にすえると害やたたりがあるとして禁じられている灸。】
【注⑧ 皮切り=最初にすえる灸。】
【注⑨ 草鞋(わらじ)に同じ。「わらぐつ」の変化したもの。】
【注⑩ おしょぼからげ=着物の、背後の裾をからげ、下から帯に差し込むこと。】
【注⑪ やすらひ=気がすすまずぐずぐずしていること。】