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たゝかれて。涙はら〳〵こほしながらいたいとだにも声立ず。いや盗(ぬすみ)は
せぬ母様の足いたい。あるかれぬと有ゆへに。やいと■(もら)ひに来た
はいや。こらへてくれとへつらわぬ。詞にすじやう顕(あらはれ)てめも当られ
ぬ次第也。女房見かねいとしやさんぐうかなする人。お袋はとこにぞ鞵(わらぢ)
か足をくふたか。艾ほしくばやらふかといたはれば。いやおきや〳〵。親を
だしにつかふは。物取のおくの手。《割書:ヤイ|》小ぢよく【注】。こんどは是をくらふかと。杵
ふりあぐれは旅人共《割書:アヽ|》是々。爰は我々が噯(あつかひ)。うそにも親とは
きどく也。こりや艾とらせんと一袋 投(なげ)出し。はやふ帰つてすへてやれ
と皆々通れば房若。大へいらしく押 戴(いたゞき)。いたさこらへて泣た顔せまいと
すれどないじやくり笠かたぶけて立帰る。門見廻して女房おつとを
招き。今の子を合思か。なんほうよごれやぶれても衣裳(いしやう)つきに
見所有。物いひの大やうさ目元口もと帯刀様にいきうつし。疑(うたかい)
もなき房若様とやらにまがひはない。おいとしやたてはき様今度
の恥辱(ちじよく)すゝがれす。都へ帰つて切腹する妻子が是へ来るならば。
【注 子供をののしっていう語。】