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声。久作は爰か都からきた明てたもと。表をひそかにたゝくおと
応(おう)と答(こた)へてかけ出る。ふとんの下から裙(すそ)ひつとらへ。米やか味噌
屋か留守じやといへ留守じや〳〵と引とむる。《割書:エイ|》物 負(おふ)た覚へは
ないとふり切て門口の。とらやおそしと走出なふおくさまかおゆかしや。
おいとしやさいぜん此お子をそれ共存ぜす。慮外(りよくわい)致せし勿体(もつたい)なや
とすがり付は北の方。むかしにも似ぬ此有様身のうき時の人頼み。
恥しさよと計にて涙に。くれておはします。《割書:ヲヽ|》お力ないは御尤
され共大事の此わこ様お気ばししなせ給ふな折ふし夫は風心地
先々是へと痛(いた)はりてぬき捨わらぢ洗足の。床(ゆか)は簀(すの)子のわら葺(ぶき)
や。洩(もり)て袂(たもと)に露霜も奥の間にこそ請しけれ是久作殿聞
てか。かゝ様親子御お出なされた。ちよつとおまへゝ出られぬか。ヲヽ聞
てはゐたがどふもあたまがあがらぬ。熱(ねつ)がつよふて気がちうをとぶ様
な。随(すい)分御 馳走(ちそう)〳〵といひ捨ふとん引かつく。《割書:アヽ|》時もときの煩ひ
やとおくに出れは北の方。なふ久作の病気とはさぞやそもじの