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森にやすらひてそれから。さきを見渡せば。沖のかも
めや磯辺(いそべ)のちどり。羽(は)音さびしきさゞら波きけばさな
がら。夜の雨。たが中立の。文づかひ。花にをりはへ行 鳫(かり)も。
爰の気色(けしき)をわすれかたゝにおち返り。飛かふつばさほの
〳〵と帆(ほ)かけてはしる。とも船も恋の道かやかぢをたへ。
ゆくゑしらはのやばせに渡る。からろのひやうしがかくり。
ころり。から衣。打出(うちで)のはま打出て。見ればゆきゝの袖
しけく人や見しらん見られじと。笠をそらせてよそめ
ふる。空にはにじの。色どりて花のゑ付の。鏡山。顔にほ
や〳〵秋の日の。さして誰とて恥もせず。かまひはせね
ど旅(たび)なれぬ身はとりなりもなをさんとみだけし髪(かみ)の
柳かけしばし。立より給ひしに。是もやつれし旅人の
七つ計のおさなひの手を引あゆみつかれしは母ぞと見えし
柞原(はゝそはら)。木影(こかげ)にお休みなされしは都人と見参らす。ちか比