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翻刻
過た惟茂かすはう長袖長袴で。毎日山を廻ると聞。諸任が下心鬼は
付たり惟茂退治の合点《割書:サア|》侍から足軽中間奉公とは此度。命を主に
くれたと思ひ。惟茂とひつくんで指ちがへ。此無念をはらさせよ頼む
〳〵といひけれは。せこの者共猶ふるひ鬼とはいへどめに見ぬ事。第一
すかぬは惟茂。其上に金剛兵衛おもだか次郎なふいやゝ。鬼にかな棒惟茂
にぼた餅。さい〳〵てなみたべ付た《割書:ハアヽ》悲しや。俄に虫くいばがいたんできた。
お暇申上ますと一人逃て立けれは。持病の中風がおこつたと口をゆがめ
て立も有。当月老母 産(うみ)月の《割書:ヤ|》。今日は我等がおぢ桓武(くはんむ)天皇の命日の。
なむさん跡の煮売(にうり)屋の。銭忘れたやつてこふ。旦那(たんな)寺の長老が欠落(かけおち)しられた。
船頭(せんどう)がやねから落た馬子が川へはまつた。何 ̄ン のかのとかこ付に皆々はつし逃にけり。
郎等(らうとう)楠辺(くすべ)の平蔵立あがり《割書:ヤレ|》臆病(おくびやう)者。一足ても立さらば一々首を討べきと
よばつても聞入ず。あれ御らん候へ残らす落失せ主従(ししゆ)二人鬼住山にあんかんとして
手 柄(から)にならず。あやまつては御ちじよく。麓(ふもと)へ一先さがりあれかしといへは《割書:ヲヽ|》我もさ
は思へ共。さいぜん麓にて金剛兵衛とおもだか次郎がちらりつと見へたれは此道下るは