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無用心おく山は又鬼の気遣。今では鬼と惟茂と両方に敵がふへて来た。
どふぞ脇(わき)道は有まいかと。夕日も年もかたふきて。七十余りの柴(しば)人の。腰もねぢ
れし山道を。たゝぼくほく〳〵あゆみくる。こりや〳〵おやち。何と此山にわき道はない
か。鬼がすむとはいへ共。定て劫(こう)へた熊かいのしゝかを。鬼と云なす物ならん有
やういへと有けれは。扨々々。疑(うたがひ)ふかいお侍必油断なさるゝな。有時は女共成有時は
ちつほけな小坊主(ばうず)で出ることも有。時によつては鼠衣にづだ袋道心者共
顕るゝ。彼 世話(せわ)に申鬼に衣といふ事は此山からおこつたげな御用。心とそこたへける。
さすがの諸任聞たびにびく〳〵〳〵して。《割書:サア〳〵|》どふぞきづかいない道があらば教てくれ。
《割書:サア》そこが変化(へんげ)の通(つう)力。けふ来た道があすはなく。きのふ迄ない大石が夜の間
にぬつと出来るやら。大木かはへ出山入を迷(まよ)はずやら。道とて更に定まらず
《割書:ヲヽ》こはいこと〳〵。去ながら忝い余五将軍惟茂様。鬼神退治なさるゝよし国中の
悦び。是をねたんで。橘の諸任とやら。惟茂様をねらふとの風説。此諸任めを
見付次第。打ころいてのけうと国中のわかい者。手くすね引て待かけると。いはせ
も果すむなぐらつかんでどうど投(なげ)《割書:ヤイ|》ちいめ。うぬは惟茂に何 ̄ン ぞ囉(もら)ふたな