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太郎広文。父の恨世の敵めのまへ主君に敵するやつ。あますましきと両方より打て
かゝれは。諸任しゝのいかりをなし。ひらりとはつしひらりとぬけ。かいくゝつて北の方を小脇にかいこみ
太刀もぎ取。寄な世忰(せがれ)め一討と八方払ふきつ先にさうなくも寄つかず。母は悲しみ声を上。我
を捨て早逃よ。大しの身じやとあこがるゝあやうかりけるまつさい中。金剛兵衛おもだか次郎。
敵の郎等 楠辺(かすへ)平蔵をひつつかみ。打立〳〵来りしがやれでかいた小太郎。しつはと討小太郎と
力を付ておがみ打。胴は一つに二人の太刀。平蔵がかうべより十文字にそ切 割(わつ)たり。諸任
是はと見返る間に小太郎すざさずつゝと入り。たゝみかけ〳〵。太刀打おとし。まうつむけ
にたゝきふせのつかつて。《割書:ヤイ|》なこなりや今じや〳〵と。むな板を。ゑぐりくり〳〵首打落し
《割書:アヽ》よい気味しやと笑ひしは。天晴(あつはれ)武功の親ぞんと母は悦びかきりなし。両人悦ひお手
柄〳〵。鬼の首同前の高名弥君の御仕合。麓へさがつて先御らんに入られよ。母御
の満足。さこそ〳〵といひけれは。されは御 推量(すいりやう)なされませ。あの親程な諸任を。鬼に成
てたました云廻しの弁舌(べんぜつ)。後には人も売ましよと笑ふて〽打つれさがりけり。金剛
おもだか息をつき。扨何 ̄ン てもないやつによつほとの骨折たり。かんじんの鬼にあふた
時くたびれては詮もなし。暫(しばら)く休息(きうそく)せまいと。十かい余りの榎(ゑのき)の古根(ふるね)横たは