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翻刻
つてこけむせり。《割書:ヤア》くつきやうの休所と両人あげ足腰打かけ。心そろひしふてき
者。鬼神退治は事共せず世間咄 恋咄(こひはなし)。是に酒が有てはと紅葉をながめ
ゆう〳〵と気をのはしてぞ休ける。不思議やこくうの霧(きり)の中うす引ごときしはが
れ声。何物なれは推参な。足をのはしてまとろむ所ひざの上てやかましい。
けちらしてのけうずやつとよばゝる声。ふり上見れは一丈計の鬼のつら。角は
柯木(かぼく)頭(かしら)は茅(ちかや)。まなこの光は饒鉢(にようはち)を打て付たることく也。二人太刀に手をかけ下を
見れはこはいかに。木の根と身へしは鬼のすね。朱(しゆ)ぬりの岩共いひつべくさすが
のもの共はつとせしか。《割書:ヤア》不行義(ふきやうぎ)な鬼殿。人のまへにすねをのばして見くる
しゝ。足かながふてくにならば切こまげてとらせんと。切つけんとする所を乗
せながらぬつと上。おうとおめくはね足に百間計けちらしてけすが。
ごとくに失せにけり。金剛兵衛すつくと立。是おもだか。さぞや鬼が心には
我々をけちらしたとおもふらめ。我々は又鬼のすねを下じきにしたからは。
勝負(せうぶ)は五分〳〵《割書:サア》。是からは鬼にも人にも気が出来て面白い。おく山ふかく
切入らんいざこいといふ所へ。そりさげ野郎(やらう)の小やつこが。だいなしの裙(すそ)ちりけ