翻刻
かたあり又(また)は学文(かくもん)をもよくととめたる医師(いしや)尓て
療治(りやうぢ)はしかも上手なりしがすこし思ひより
の下心ありて此草子書(このさうしかく)れしと語(かた)る人も有(あり)
それはとまれかくまれもろこしの事を思ひ合
する事あり三山の菁京(しやうけい)といひし人/軒岐救(けんききう)
正論(せいろん)の書(しよ)をあらはしていしやの鏡(かゞみ)又は病人方(びよう尓んかた)
の鏡(かゞみ)を書て唐(もろこし)の医者(いしや)の心ざまのよしあし
或(ある日)は世(よ)わたりのてたてに/見分(みぶん)を控川
とて大/名高家(みやうかうけ)へ出入(いでいり)をなす心底(しんてい)/色(いろ)々の有様(ありさま)
何角(なにか)につゐて十二三いろの/鏡(かゞみ)を書て医者(いしや)
に/段々(だん〳〵)の様子(やうす)ある事をしるしてあしき事
をしかりけり人のあしき事をおほひかくし人
のよき事をはあけて不むるならひなる尓い
かなる事にかくはしかるそといへは昔(むかし)/黄帝(くはうてい)
岐伯(きはく)の道(みち)ある事をしりて其道にそむくとも
がらの事は何(なに)ともおもはぬゆへにしかるといへり
彼(かの)心ざまあしきいしや此鏡によりてみれは我
なりふり善悪黒白(ぜんあくこくびやく)あきらかに見ゆるなれば
そこにて其(その)あしき所をなをす様(やう)にして医(い)
道(だう)の能道(よきみち)へは是々(これ〳〵)此方かよきぞと大/声(こゑ)によば
はりてあしき道へゆく人をよひかへして首(かうべ)
をふりむかするなり先/菁京(しやうけい)はいしやのわづらひ
をなをすといへりそれはなぜになれは医者(いしや)
一人して一代に千万人の病人(びよう尓ん)をなをすにすれ