翻刻
門外(もんくはい)に/居(い)申と申せは大名(たいみやう)それは人かと御申
有/中(なか)々人にて御座(こざ)候と申大名其人が宝物(たからもの)
とは何(なに)の用(やう)に/立(たつ)そと御申有/時(とき)/太郎(たろう)くはしや
されは粟田口(あわたくち)の惣領筋(そうりうすぢ)にて唯(たゞ)一人千き万き
の前(まへ)へむかへは皆々(みな〳〵)/歒(てき)がめつきやく仕(つかまつる)と申大
名それは成不と宝物(たからもの)らしき事也然は粟田(あはた)
口(くち)の正銘(しやうめい)の書付(かきつけ)が有不とに合(あはせ)て見へし答(こたへ)
候はんか問(と)へと御申ある太郎くはじや其通(そのとをり)をとへは
中(なか)々/答(こた)へ申さんと申太郎くはしや其通(そのとをり)を申
上る其時大名/粟田口(あはたくち)の正銘(しやうめい)の書付(かきつけ)を取出(とりいだ)し
て何(なに)々あはた口(くち)の正銘(しやうめい)の事ま川一/番(ばん)に/身(み)
はふるかるへしと身(み)かふるひか尋(たつね)てまいれと有
太郎くはしや身はふるひかと尋(たつね)ぬれはこぶ湯(ゆ)の侭(まゝ)
にて終(つゐ)に湯風呂(ゆふろ)を仕らぬゆへに/随分(ずいぶん)身はふる
ひと申太郎くはしや其通(そのとをり)を申上る大名/其由(そのよし)を
聞(きく)それはふるけれともむさい事しやなと云て又二
はんには歯(は)か加たかるへし扨ははづかたいか尋(たつね)て来(きた)
れと有太郎くはしや其通を/尋(たつね)ぬれは随分/歯(は)
はかたく候/御前(こせん)にて岩(いは)がんせきにてもかみわり申
へきと申太郎くはしや其通を申上る大名かた
い〳〵と云て又三はんにはゞきもとくつかるへし
はゝ起もとがくろひか尋(たつね)て来れと有太郎くはしや
其通を尋ぬれは中々の事い年ても覚(さめ)てもしゆ
すのきやはんをいたし候是もはゝきもと黒(くろい)と申