翻刻
さるへきやと申太郎くはしや其通(そのとをり)を申上れは
大名あふくろい〳〵四/番(ばん)に/但両銘(たゞしりやうめい)なるへし両銘(りやうめい)
か尋(たつね)て来(きた)れと有太郎くはしや其通(そのとをり)を尋(たつね)ぬれ
は少あぐみ顔(がほ)なりしか申やうは上(うへ)の京(きやう)に/姉(あね)の娘(むすめ)
あり下京に/妹(いもうと)の娘(むすめ)が御座(ござ)候/是(これ)も両(りやう)めいと申
さるへきやと申太郎くはしや其通を申上る大名
あふ中々/両(りやう)めい〳〵なり扨は粟田口(あはたくち)の正身(しやうじん)上る也
と云此/狂言(きやうげん)の躰(てい)を案(あんす)るに/書付(かきつけ)はすこしもたが
はす能々(よく〳〵)あひぬれ共/打物(うちもの)と人と不との大なる
替(かはり)あり然は前(まへ)の書物を沢山(たくさん)によみても薬(くすり)の
きかぬ人の躰(てい)を引合て申さは病(びよう)人に/対(たい)し
て頭(かしら)がいたひかと問(とへ)はいたひと答(こたへ)さむけあるかと
問(とへ)は中(なか)々/寒(さむ)け有といひ其後熱が来るかと問はいか
にも其通(そのとをり)と云そこにて脈(みやく)をとれはしかも浮(うき)てすゝ
む是(これ)こそ風(かせ)を引(ひき)たるなり書物(しよもつ)の上(うへ)に/少(すこし)もはづ
れなきと思ひて薬(くすり)を用(もちゆる)にすつかりとはつれ
て薬がきかぬはいかゝなれは右(みぎ)の病症(びようしやう)に/風症(ふうしやう)も
有べし又は食傷(しよくしやう)も有へし又はおこりなと煩(わつら)ひ
出しも有へし暑気もあるへし其/外(ほか)/何煩(なにわつらひ)にも
能々(よく〳〵)/似(に)たるもの有へき事なればよく書付(かきつけ)にあふ
てはつるゝ/似(に)た所を見分(みわけ)ぬるを心の妙(めう)の働(はたらき)
と申へし誠(まこと)に/同(おな)しく見てひとりしりいろ
なきを見/味(あぢは)ひなきをなむと有所なるへし
書物(しよもつ)を沢山(たくさん)によみ学問(かくもん)を能(よく)しても似(に)せ正(しやう)