翻刻
事(こと)は何(なに)々ぞといふ時(とき)に/孫真人(そんしんじん)といふ人の言(ことば)
に医(い)たる人はかならす甲乙経(かうを川きやう)/素問霊枢明堂(そもんれいすうみやうたう)
流注(るちう)十二/経絡(けいらく)三/部九候(ぶきうこう)五/蔵(ざう)六/府(ふ)/表裏孔穴(ひやうりこうけつ)
本草薬對仲景叔和(ほんざうやくついちうけいしゆくわ)/之(の)/諸部(しよぶ)をそらんし
妙(めう)に五/行陰陽(ぎやうゐんやう)を解(かい)し周易(志うゑき)を/精熟(せいじゆく)し
て医(い)となるべしさなくは無目(むもく)の夜遊(やゆふ)とて目(め)
くらはひるさへ見へぬに/夜(よ)あそびするやう耳
て動(やゝ)もすればたをれ/損(そん)するかごとく物(もの)ことに
ゆきあたりつまる事ばかりなるべしとかゝれ
たりしかるゆへに加類〳〵しくいしやをはならふ
へからすとなり医者(いしや)にならんと思ひ立(たち)ても商(しやう)
量(里やう)とはかり〳〵てそこつに/医(い)を/習(なら)ふるといへ
り/又医者(またいしや)にならん人は質実(しつじつ)にいつはりなくと
いふて生(むま)れつきもうそをつかぬ実躰(じつてい)なる人
尓て陰功(ゐんこう)とて人目(ひとめ)にも見へぬ所(ところ)の慈悲(じひ)の心
ある人にてなくはかならす習(ならふ)べからすとなりよの
つねの事(こと)佐也うそは事に/害(がい)ありてあしき耳
まして命勝負(いのちしやうぶ)の事(こと)にうそなどつきなばいかゞ
よかるべきやたゞし其医者(そのいしや)の心は一はいにて
少(すこし)もうそとは思はねとも本理(不んり)を達(たつ)せぬは是非(ぜひ)もな
しされは我等(われら)の心に/少(すこし)もわだかまりはなきと
いふ人も有へししかしなからそれしやほとにとて
理(り)にちがひなは天道鬼神(てんたうきしん)の大/目(め)にはうそと御覧(ごらん)
有(ある)へし去(さる)によりて通一斎(つういつさい)といふ人の文(ふみ)にも