翻刻
人を暗々(あん〳〵)の中(うち)に/殺(ころ)すといふて我(われ)もしらず人
も知(志ら)ぬ中に/殺(ころ)す事(こと)なれはつゝしむへき事也
又は一/方(はう)一/論(ろん)を聞(きゝ)て医(い)を/能(よく)すといふ人は欺(あざむ)く
といふ物(もの)也と云(いゝ)たる人も有(あり)とかくつとむべきとの
をしへ也/扁鵲(へんじやく)が垣(かき)の一/方(はう)の人をみるといふて
かべのあなたの人を見/蔵府(さうふ)の内(うち)まで見ぬく
と云(いふ)も目(め)をもちて見るものかは眼(まなこ)を理(り)に
よせて見る也/去(さる)によつて医(い)と云(いふ)は理(り)なり
ともいへりとかく三/國(ごく)への某(それがし)とじまんするほと
に/医道(いだう)をつとめて加ら人の命(いのち)を司(つかさ)ざるい
しやをは行(おこなふ)べしとの事(こと)なるへし是(これ)/医師(いし)
へのをしへのかゞ見なり
右(みぎ)のかんばんをみて道行人(みちゆきひと)そへ筆(ふて)をかく
扁鵲(へんじやく)やぎば尓もまさる竹斎(ちくさい)を
釈迦(しやか)耳あはせぐ残(のこ)りお不さよ
とかくのごとく添筆(そへふて)をしたりけり
さそ〳〵此添筆(このそへふて)も奇妙(きめう)也/釈迦(しやか)は天竺(てんぢく)の事(こと)
なれば此竹斎(このちくさい)にあはすへき事(こと)いかゝ時代(じだい)も違(ちが)
ひ所(ところ)も違(ちが)ひておよひもなき事(こと)なれとも願(ねがは)くは
其時分(そのじぶん)に此/竹斎(ちくさい)の居(い)ら連多くは釈迦(しやか)は御(ご)
入滅(にうめつ)もあるましき事と申せはかくいはれまし
き事にもあらす尤(もつとも)の/事(こと)也/倩(つら〳〵)下心(したごゝろ)を案(あんす)る尓
是(これ)は病人方(びようにんがた)へのをしへの鏡(かゞみ)也/煩(わづらふ)人あらば死(し)せ
ぬさきに/能々(よく〳〵)よき医者(いしや)を尋(たつね)まはりてかけ