翻刻
よ跡(あと)にて悔(くや)まぬ様(やう)尓すへしとの鏡(かゞみ)なるへし菁(しやう)
京(けい)の詞(ことば)にも病家(びようか)には先(まつ)/医(い)をえあらふか専(せん)一也
といへり下手(へた)/医者(いしや)にか気て仕(し)そこなひては
療治(りやうぢ)のならぬやうにむつかしくなる有又一/代(だい)
の持病(ぢびよう)となるも有また直(すぐ)に/死(し)るも有あげ
くのはてに/死(し)してのゝち一/門(もん)一/家(か)あつまり悔事(くやしこと)
多(お不)しそこ〳〵の/何(なに)といふ医者(いしや)にかけ申さん物(もの)
を残多(のこりおほ)やさればの事はやく誰殿(たれどの)に見せたら
ばよからん物(もの)をなどいひて歎(なげく)事ばかり也/是(これ)を申
さん為(ため)のそへ筆(ふで)と聞(きこ)へたり亦世間(またせけん)を見聞(みきく)に
最早我々(もはやわれ〳〵)はこのいしやとのをぎば扁鵲(へんじやく)と存(ぞん)ず
れは此薬(このくすり)にては死(し)するとてももはやくゆる/所(ところ)
なしと思ひきはむる人もおほしそれとても爰(こゝ)
に/珍敷能(めつらしきよき)いしやかありたるものをといはゞ残(のこり)
多(おほく)思ひてくやむにて有(ある)扨々又は病(やまひ)おもく
なりて何(なに)ともすべきやうもなく爰(こゝ)のいしやも
はなしかしこの医者(いしや)もかゝらず何(なに)とかせんと
親類共(しんるいとも)/又(また)ははなす中(なか)/寄合談合(よりあいだんかう)まち〳〵に
してあげくのはてにはおはらひくしをあ気や
れこ禮〳〵の医者/殿(どの)こそおはらひくじ尓上里
たるぞ是非(ぜひ)とも此仁(このじん)を頼(たの)めと思ひ極(きはむ)事
もありされは病(やまひ)をもり究(きはま)る時(とき)なれはこの御
はらひくじに上りたるいしやの薬(くすり)もきかぬ事
おほし同(おな)しくは煩出(わつらひいだ)して薬(くすり)をのまんと思ひ