翻刻
【右丁】
伊勢海(いせのうみ)きよき渚(なぎさ)の玉をひろ
ひ。山田原(やまだのはら)の杉(すき)の下露に筆を
したで【注①】ゝ。二巻(ふたまき)にものしもて来(き)
たるを見れば養生の哥なり。
さらぬ月花の上にだに。心を
もとむるにしづのうみをの
【左丁】
みたれやすく。詞をつゞけんとす
れはふしのしげ糸(いと)ふしだつ事
のみありて。いにしへよりよむ事
のかたき道になんいひつたへ侍るを。
此二百首は。心わたづうみ【注②】のそこ
ひ【注③】なく。よりくる浪にこと葉の花
【注① したづ(滴づ)=したたらせる。そそぐ。】
【注② 「わたつみ」に同じ。海。海原。】
【注③ 際限。はて。】