翻刻
入る沂神色変せす問て曰賊船退きしや否やと
船人答へて曰去れりと沂喜ひて同僚に謂て曰
公事の為めに死を致す固に臣等の分なり吾遺
憾なしと細に後事を托して瞑目す是歳孔子の
廟を久米村に建て春秋二仲上丁の日を以釈尊
の礼を行う延宝元年琉球清国に進貢す明の遺
臣鄭経據りて台湾に在り経か兵卒琉船の台湾
海を過るを見て之を奪ひ人貨共に没す琉球之
を薩藩に訴ふ島津光久幕府に稟す後台湾の船
長崎に来る長崎奉行其船長を詰責して銀三百
貫目を出さしめ前日彼の兵士の掠奪せし罪を
償はしむ幕府其銀両を琉球に賜ふ九月尚貞薩
摩に由て恩を謝し方物を幕府に献す後奥州相
馬の漁船漂ふて台湾に到る鄭経厚く保護を加
へ人を副へて送還す幕府亦其厚諠を嘉し銀を
贈り且向きに奪う所の琉人を帰さんことを求
む四年明の遺臣靖南王耿精忠遊撃将軍陳應昌
を遣して琉球を□諭す尚貞応せす六年冬尚貞
耳目官陸承恩等を清国に遣し船一隻を増し貢
使の往来を便にせんことを請ふ清王之を許る