翻刻
旬の郵便船と定め用意あるへしと今回上京の
事に就きては病に托し辞を設け種々歎願を為
すこと数回に及へとも書記官は其時々反覆弁
論遂に之を斥けたり次に旧藩事務受渡の手順
を為し事項を品書し随行員へ分課せり既にし
て四月十二日政府より特に差遣されたる官船
明治号を以て
内勅使富小路侍従《割書:敬|直》着県あり十三日 勅使は
松田書記官と共に中城邸に抵り旧藩王に病褥
に遇ふ乃ち慰労として 勅使を遣され且上京
に就きては航海安全の為め汽船明治号を差立
られ着次第東上
天機を伺ひ奉らるへし云々と
聖諭を奉し其筋よりの一書を渡されたり是に於
て書記官は来る十八日を以て発程の期とし用
意あるへし医員は官より差副へらるへし但介
抱の為め婦人を携帯するは苦しからさる旨を
以て諭示せり《割書:藩王ハ心疾ノ如ク見ヘ|タレトモ重症ニアラズ》後屡々発
程延期を請ふ初めに四五月間を期し次に九十
日を要し又八十日を請ふといへとも皆之を却