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コレクション: 恋川春町

悦贔負蝦夷押領 : 3巻 - 翻刻

悦贔負蝦夷押領 : 3巻 - ページ 16

ページ: 16

翻刻

タンカンはゑぞ中のこんふかすのこ を引上十分一をよしつねの御くらへ つめのこりはみんなせしめ うるし#1ゆへなにふじ ゆう なく わが やし きを せん つくし ひつく して ふしん をし よし つね公を 御しやう たい申 上ける是 よしつね しう〳〵を 酒をもつて しいつぶし#2の こらすみな ころしにして おのれかゑそ の大王となり 日ころこゝろをかけし くわいらん夫人を 女ほうにせんとのたくみなりよしつね 公はそのくらいのはかり事ははしめ から御そんしにてタンカンをわざと とり立しゆつとうさせゑぞ 中のこぶかずのこをのこらず とり上させてしかうして後 にタンカンがやしきへ御入あるべき よしおゝせ出されける タンカン一世のはれと 山海のちんこふをつくし よしつね公を御しやう たい申けるよし つねじんへん きとく酒#3を もつてしう れん大わう をはしめ のこらすこちらから しいつふし#2てぜんごも しらぬ内にこふにてこし らへたるきうてんろうかく#4 いるいまではきてのこらず きざみこぶとしかすのこの いしがきはふくろにつめてさし もにけつかうをつくしてつくり立たる ゑそをもとのしま国にし給ふ 〽夫人やタンカンといふやつはいもかしらの やうなあたまてそなたをくどくとは いやなやつだだんかんじんはいひ めいもんだ 廿三やにはこのこぶへあふらけを             入やう 〽しうれん大王はしめ その外ゑそ人かへつてよしつねの はかり事にてしいつふされ#2ぜんごも しらずゑいふし丸はたかにされる 【以下台詞等、すべて何か洒落を言ってるはず】 うめこうこれでこぶか一をく 二万びやうできたぞまつと せい出してきざみ給へ こんふ大王九代の こういん#6はとうだ        〳〵 たん ば与作 がう?た? ふ?などゝ タン カン ねこと を ぬ か す#5 そんなねことはおきや かれゑぞぎりの ねごとだ 平のとももりより たらいのまもりは くさそうしの さ く しや なか  まだ さくしや なかまて うきなたつ こいし?が かうてんだ【?】

現代語訳

タンカンは蝦夷中の昆布・数の子を引き上げ、十分の一を義経の御蔵へ納め、残りはみんな着服した。漆のように何不自由なく我が屋敷を贅沢に建て直して普請をし、義経公を御招待申し上げた。これは義経と従者たちを酒をもって酔い潰し、残らずみな殺しにして、己が蝦夷の大王となり、日頃心をかけていた怪蘭夫人を女房にしようとの企みであった。 義経公はその程度の謀略は始めから御存知で、タンカンをわざと取り立て出頭させ、蝦夷中の昆布・数の子を残らず取り上げさせて、しかして後にタンカンの屋敷へお入りになるべき旨を仰せ出された。 タンカンは一世一代の晴れの舞台として、山海の珍味を尽くして義経公を御招待申し上げた。義経は人並み優れた機転で酒をもって従者大王をはじめ残らずこちらから酔い潰して前後も知らぬうちに、昆布で拵えた宮殿楼閣が衣類まで着て残らずきざみ昆布と鹿の数の子の石垣は袋に詰めて、差し戻しに結構を尽くして作り立てた蝦夷を元の島国にしてしまわれた。 ♪夫人よ、タンカンという奴は芋頭のような頭で、そなたを口説くとは嫌な奴だ。鈍感人は言い迷門だ。 廿三夜にはこの昆布へ油気を入れるよう。 ♪従者大王をはじめその外蝦夷人は却って義経の謀略によって酔い潰され、前後も知らず酔い伏し丸は高くされる。 【以下台詞等】 「梅子よ、これで昆布が一億二万俵できたぞ。もっと精出して刻み給え。」 「昆布大王九代の好韻はどうだろうか。」 「丹波与作が何とかなどとタンカン、戯言を抜かす。」 「そんな戯言は置いておけ。蝦夷切りの寝言だ。」 「平の知盛よりたらいの守りは草双紙の作者仲間だ。作者仲間まで浮き名立つ恋路が好転だ。」

英語訳

Tankan collected all the kelp and herring roe from throughout Ezo, delivered one-tenth to Yoshitsune's storehouse, and embezzled the rest. Like lacquer, he luxuriously renovated his mansion without want and invited Lord Yoshitsune. This was a plot to get Yoshitsune and his retainers drunk with sake, kill them all, become the great king of Ezo himself, and make Kairan-fujin, whom he had long desired, his wife. Lord Yoshitsune knew of such schemes from the beginning. He deliberately promoted Tankan and had him collect all the kelp and herring roe from Ezo, then announced that he would enter Tankan's mansion. Tankan prepared the event of his lifetime, exhausting all manner of delicacies from mountain and sea to entertain Lord Yoshitsune. Yoshitsune, with his exceptional wit, used sake to get the retainer-king and all others drunk first, and while they were unconscious, he transformed the palace and towers made of kelp, even the clothing, all into chopped kelp, stuffed the stone walls of deer herring roe into bags, and restored Ezo to its original island state with exquisite craftsmanship. ♪ "Lady, that fellow Tankan with his potato-like head trying to woo you - what a detestable fellow. Dull people speak in riddles." "On the 23rd night, put oil into this kelp." ♪ The retainer-king and other Ezo people were instead intoxicated by Yoshitsune's stratagem, and not knowing front from back, the drunken one was elevated. [Dialogue sections] "Umeko, with this we've made 120 million bales of kelp. Work harder and chop more!" "How are the nine generations of the Kelp King's verses?" "Tanba Yosaku is spouting nonsense about this and that, Tankan." "Leave such nonsense aside. It's the sleep-talk of Ezo-cutting." "Taira no Tomomori's tub-guarding is among the kusazōshi authors. Even fellow authors get romantic reputations - what a favorable turn!"