翻刻!江戸の医療と養生

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養生一家春 - 翻刻

養生一家春 - ページ 11

ページ: 11

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【右頁】   養(やしな)ふの良方(りやうはう)也/心(こころ)正(ただ)しからず意(こゝろばせ)誠(まこと)ならずして書(しよ)に見(み)らるゝ人(ひと)は   徒(いたつら)に精神(せいじん)を費(ついや)し驕慢(けうまん)の気(き)日(ひゞ)に長(てう)じて身(み)を終(おふ)るまで道(みち)を   得(う)る事(こと)あたはず遂(つい)に生(せい)を亡(ほろぼ)すの毒(どく)と成(な)る事(こと)譬(たと)へは酒(さけ)は天(てん)の美(び)   禄(ろく)にして百薬(ひやくやく)の長(てう)とす実(じつ)に生(せい)を養(やしな)ふの佳品(かひん)【左に「ヨキシナ」と傍記】なるに酒(さけ)に呑(のま)るゝ   人(ひと)は心(こゝろ)を乱(みだ)し腸(はらわた)を腐(くさら)して遂(つい)に性(せい)を伐(き)るの斧(おの)と成(な)るが如(ごと)し   医(い)を業(げう)として養生(やうじやう)の道(みち)を誤(あやま)り説(とく)事(こと)あるは他(た)なし事(わざ)に泥(なづ)み   術(じゆつ)に拘(かゝは)りて究竟(きうけう)【左に「ツマルトコロ」と傍記】其(その)道(みち)に明(あき)らかならざるが故(ゆゑ)なり譬(たと)へば碁(ご)を   囲(かこ)む人(ひと)局【左に「バン」と傍記】に当(あた)【左に「ムカフ」と傍記】る者(もの)は昧(くら)く傍(かたはら)に観(み)る者(もの)は明(あきら)かなる如(ごと)し儻(たま〳〵)其(その)道(みち)   明(あき)らかに其(その)術(じゆつ)精(くわ)しく碁(ご)の極(きよく)【左に「ゴクイ」と傍記】に詣(いた)れる人(ひと)碁(ご)を囲(かこ)む時(とき)は傍(かたはら)に観(み)る   人(ひと)幾千万人(いくせんまんにん)力(ちから)を戮(あは)すといへども争(いかで)か是(これ)に敵(てき)せんや医(い)もまた其(その)道(みち) 【左頁】   明(あき)らかに其(その)術(じゆつ)精(くわ)しく医(い)の極(きよく)【左に「ゴクイ」と傍記】に詣(いた)りて是(これ)を説(とく)人(ひと)あらは誰(たれ)か   是(これ)に勝(まさ)らんや古今(こゝん)其(その)人(ひと)少(すくな)し特(ひと)り漢(かん)の長沙(てうしや)の大守(たしゆ)南陽(なんやう)の 張仲景(てうちうけい)氏(し)方法(はうはう)を建(たて)て治療(ぢりやう)を論(ろん)じ万世(ばんせい)医(い)の規則(きそく)【左に「ノリ」と傍記】と成(な)   れる其(その)論中(ろんちう)を尋(たづ)ぬるに一(ひと)つも養生(やうじやう)の辞(ことば)を措(おか)ずして治法(ぢほう)一(いつ)と   して貫通(くわんつう)せざる事(こと)なく実(しつ)に存(そん)して議(き)せざるの聖経(せいけい)宜(むべ)なり医(い)   中(ちう)の聖人(せいじん)と称(しやう)する事(こと)医(い)を業(げう)とする人々(ひと〳〵)長沙(てうしや)の聖流(せいりう)を汲(く)み其(その)   道(みち)を明(あき)らかにし生(せい)を養(やしな)ふの理(り)を辨(わきま)へ給へ病(やまひ)を治(ぢ)するの術(じゆつ)は是(これ)を掌(たなこゝろ)に   視(み)るが如(こと)くならん歟(か)庶幾(こひねがはく)は医(い)の不養生(ふやうぜう)と云(い)ふ諺(ことわざ)に陥(おちい)る事(こと)なかれ     信山(しんざん)の無名(むめい)逸医(いつい)東都(とうと)におゐて杏露(けうろ)の春園(しゆんゑん)に                         しるす