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【右頁】
泥(なづ)むときは却(かへつ)て心得(こゝろえ)たがふ事あるものなれば養生(やうぜう)の道(みち)には
唯(たゞ)血(ち)は気(き)に従(したがつ)て順行(じゆんこう)【左に「メグル」と傍記】する物(もの)とのみ心得(ころえ)て喜怒(きど)情欲(じやうよく)を心(こゝろ)
にとゞめずして我(わ)が気(き)の儘(まゝ)にせさるこそ己(おの)れを虚(むな)しくする也
と思(おも)へば気(き)に滞(とどこ)ふる事(こと)なく塞(ふさ)ぐ事(こと)なくして血(ち)はおのづから調(とゝな)ふ
ものなり日々(ひゞ)に我(わ)が気(き)にまかせぬ事(こと)の折(おり)にふれては心(こゝろ)に思(おも)ひ
をとゞめざる事(こと)譬(たと)へば鏡(かゞみ)の影(かげ)をうつし物(もの)去(さ)れは跡(あと)なき如(ごと)くなる
べし其(その)上(うへ)鏡(かゝみ)は己(おのれ)の美醜(びしう)【左に「ヨシアシ」と傍記】を照(て)らし見(み)る具(ぐ)【左に「ダウグ」と傍記】にして人(ひと)のよしあしを
見(み)る器(うつはもの)にあらざる事(こと)を知(し)りかれこれを深(ふか)く考(かんが)へ見(み)て鏡(かゞみ)は実(じつ)
に婦人(ふしん)生涯(せうがい)の守(まも)りとせば生(せい)を養(やしな)ふ道(みち)の源(みなもと)に逢(あふ)ふべし
鏡(かゞみ)を常(つね)に曇(くも)らし又(また)は麤忽(そこつ)【左に「ヲロソカ」と傍記】にあつかひし人(ひと)必(かなら)らず思(おもひ)を労(らう)し
【左頁】
或(あるひ)は心(こゝろ)を狂(くる)はし又(また)は災害(さいかい)【左に「ワサワイ」と傍記】を招(まね)きし事(こと)を伝(つた)へ聞(き)きぬ予(よ)も
また面(まのあた)り見(み)し事(こと)あり恐(おそら)くは其(その)咎(とがめ)ならん歟(か)別(わけ)て是(これ)を爰(ここ)に
しるし置(を)くも世(よ)の人々(ひと〳〵)慎(つゝし)んて是(これ)を守(まも)り給ん事(こと)をねがふのみ
女(をんな)に血(ち)の余(あま)り有(あ)るは子(こ)を育(いく)【左に「ソダツ」と傍記】すべき自然(しぜん)の生得(せうとく)【左に「ムマレツキ」と傍記】なれば月々(つき〳〵)の
経行(けいかう)【左に「メグリ」と傍記】最(もつと)も調養(てうよう)【左に「トヽノエ」と傍記】すべき事(こと)也/血(ち)は気(き)を得(ゑ)て運(めぐ)る物(もの)なれば経行(けいかう)【左に「メグリ」と傍記】
の中(うち)は格別(かくべつ)に喜怒(きど)に犯(をか)されす情欲(じやうよく)にひかれず飲食(いんしよく)を節(せつ)にし
坐臥(さぐわ)を慎(つゝし)しみて心気(しんき)を正(たゞ)しく守(まも)る時(とき)は経行(けいかう)順(じゆん)にして血(ち)の瘀(を)【左に「トヾコヲルと傍記】
する事(こと)なく唯(たゞ)病(やま)ひを生(しやう)ぜざるのみにあらす妊娠(にんしん)【左に「ハラメル」と傍記】の時(とき)必らす
堅固(けんご)にして産(さん)の前後(せんご)かならず安寧(あんねい)【左に「ヤスラカ」と傍記】なり
女(をんな)の天命(てんめい)はそも〳〵妊娠(にんしん)【左に「ハラム」と傍記】にある事(こと)也/嗣(よつぎ)を得るの至(いたつ)て重(おも)き事