翻刻
【右丁】
一学問と云事此方の学問のことく書籍を以聖賢之道を
まなふにはあらす天文地理測量医療器物之工者或は
国を弘め民を殖し遍く万国に通商交易の事のみをま
なふと云又今日人道の教をいふも只仏道一つ而己其教諭
迚も日本唐の仏道とは大に異なり其謂は人身は誠の仮の
物に而心魂は天ゟ下りて仮りに人体に宿し又天に帰る也若
其人横行邪心をなせは死して魂魄天上なし難く長く
中浮に迷ひ苦悩をなすのみならす過去の親族の魂魄迄も
是か為に天帝の咎を蒙り共に苦脳を請る也といひて深く
是を恐懼してつねに柔和正直を専らとし□【物ヵ】に叛違する事
【左丁】
なく衆人に親しく交る事を今日人道の教とするよし
《割書:徳兵衛以下の者共何れも下賤の船子共なれは彼らか交るものも又彼国の中人|已下の者なるへけれは其導とても其身分相応の事なるへし彼国諸侯大夫》
《割書:に至迄一般の教導なるや|其実否はしるへからす》依之死去の時はその葬礼殊之外手厚
く貧福に不拘二重箱三重棺にして衣服も美麗に為着野辺
送り行粧賑々敷いたし野山江土葬致し最早魂は天上致
跡はからになりて何もなきもの也とて葬所には放而不構印も立ぬ
よし墓参抔は元より不致只葬日ゟ日々寺江参り厚く弔ふ
を礼として月忌年忌も殊之外入念よし依之船中に而死去
之者有之時は死骸を能包み箱に入延鉄を重しに附海中へ
下し鉄の重みにて砂中へ埋る様に致し矢張海中に而も土葬に