翻刻!江戸の医療と養生

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養気説 4巻 - 翻刻

養気説 4巻 - ページ 174

ページ: 174

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【右丁】  かば。二ッになりて倒(タフレ)けり。左⁻右一⁻同に《振り仮名:駭⁻嘆|オドロキホムル》ばかりなりしかば。  自(ミヅカラ)にも大に怡(ヨロコビ)て。那⁻波道⁻円に。異⁻国にもかゝる名(メイ)⁻剣(ケン)もあり  や。またかく手の《振り仮名:爽⁻利|キヽ》たる人やあると問たまひければ。  道⁻円承り。異⁻国には、《振り仮名:竜⁻泉|リョウセン》、《振り仮名:太⁻阿|タイア》といふ利(リ)⁻剣(ケン)あり。されども  人を殺(コロシ)て楽(タノシミ)とするは。人⁻間の心にはなきことにて。唐⁻土に  は。夏(カ)の桀(ケツ)⁻王。殷(イン)の紂(チウ)⁻王といひし。国を亡(ホロボ)せし悪(アク)⁻王あり。日⁻本  にて罪(ザイ)⁻人を斬(キル)ことは。穢(ケ)⁻多(タ)【ママ】 こそいたすなれと。憚(ハヾカリ)なく申ける  か。そのまゝ奥へ入たまひぬ。やがて#1道⁻円を召(メシ)て。さきに 【左丁】     いひつることこそ。至⁻極の道⁻理なれ。これより再(フタヽビ)《振り仮名:試⁻斬|タメシ》など  自(ジシン)することはあるまいぞ。かへす〴〵も諫(カン)⁻言(ゲン)のほど志-浅(アサ)から  ぬことの怡(ヨロハ)【ママ】#2ばしと。厚(アツ)く賞(シヤウ)⁻美(ビ)し給ひし。またある時。大-高源  左衛門といふ士が。司(ツカサド)ることにつきて《振り仮名:過⁻失|アヤマチ》ありしかば。吾(ワレ)  不⁻幸(カウ)にして。良⁻士を持(モタ)ざるゆゑ。何-事も慢(オコタリ)になりぬと叱(シカリ)  て。人のなきことかなとありしを。道⁻円聴て。《振り仮名:自⁻己|ジフン》の昧(クラ)くし  て。人の善⁻悪を視(ミ)あきらめざることをば顧(カヘリミ)ずして。人を咎(トガ)  めて。人のなきとのたまふは何-事ぞや。古⁻参(サン)にも新⁻参に  

現代語訳

【右丁】 ところ、二つになって倒れた。左右一同に驚き感嘆するばかりであったので、自らも大いに喜んで、那波道円に「異国にもこのような名剣があるだろうか。またこのように手の利く(剣術に長けた)人がいるだろうか」と問われた。道円が承ると、「異国には竜泉、太阿という利剣があります。しかしながら人を殺して楽しみとするのは、人間の心にはないことで、唐土には夏の桀王、殷の紂王といった国を滅ぼした悪王がありました。日本で罪人を斬ることは、穢多こそがいたすのです」と憚りなく申し上げた。そのまま奥へ入られた。やがて道円を召して、「先ほど 【左丁】 言ったことこそ、至極の道理である。これより再び試し斬りなど自身することはあるまい。返す返すも諫言のほど志が浅からぬことの喜ばしさよ」と厚く賞美された。また或る時、大高源左衛門という武士が司ることについて過失があったので、「我が不幸にして良士を持たないゆえ、何事も怠りになってしまった」と叱って、「人がいないことだなあ」と仰せになったのを、道円が聞いて、「自分が暗くて人の善悪を見極められないことは顧みずに、人を咎めて『人がいない』と仰せになるのは何事でしょうか。古参にも新参にも

英語訳

【Right page】 it split in two and fell down. Everyone around was so astonished and amazed that he himself was greatly delighted, and asked Nawa Dōen: "Are there such famous swords in foreign countries as well? And are there people with such skillful hands?" When Dōen responded, he said: "In foreign countries, there are sharp swords called Ryūsen and Taia. However, taking pleasure in killing people is not in human nature. In Tang China, there were evil kings like King Jie of Xia and King Zhou of Yin who destroyed their countries. In Japan, it is the eta who cut down criminals," speaking without reserve. [The lord] immediately went to his inner chambers. Soon he summoned Dōen and said: "What you said earlier 【Left page】 is the ultimate truth. From now on, I will never again personally perform test cuts. How joyful it is that your admonishment shows such deep sincerity!" He praised him warmly. On another occasion, when a samurai named Ōtaka Genzaemon made an error in his duties, [the lord] scolded him saying "Due to my misfortune in not having good retainers, everything becomes neglected," lamenting "what a lack of capable people." When Dōen heard this, he said: "Without reflecting on your own lack of clarity in discerning people's good and bad qualities, you blame others and say 'there are no good people' - what is the meaning of this? Among both veteran and new retainers