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あることなれども。《振り仮名:多-少|オホクカスクナキカ》此-気のあらざるものなし。これは
《振り仮名:非-情|ヒジヤウ|クサキウツハモノイシカネウミヤマ》の物(モノ)にもそれ〳〵に《振り仮名:具-有|ソナハリタル》こと。前-条にいへる香-気のご
とく。それがこの地-上に《振り仮名:満-布|ミチキリ》たる気 ̄ノ-中に映(エイ)じて。人の眼(メ)
の《振り仮名:精-液|セイエキ》の中へ、その《振り仮名:色-相|カタチ》を現(ゲン)ずることは。猶(ナホ)《振り仮名:物-状|モノヽカタチ》の水 ̄ノ-底(ソコ)に
映するものと異(コトナル)ことなく。すべてこの気の《振り仮名:運-輸|ハコビ》に由(ヨル)もの
なり。《割書:《振り仮名:臙-脂|ベニ》を《振り仮名:製-造|ツク》る家の《振り仮名:主人|アルジ》、《振り仮名:大-瞋-怒|オホハラダチ》を発すれば。その時に|製(コシラヘ)たる《振り仮名:臙-脂|ベニ》の色の必(カナラズ)《振り仮名:変|ヘん|カハル》ずるといふは。その身-体よ》
《割書:り《振り仮名:瞋-怒|ハラダチ》によりて。《振り仮名:硫-黄|イクワウ》を多く発したるに。《振り仮名:臙-脂|ベニ》の《振り仮名:感|カン|アヤカル》ずる|なり。此事は。巻の二に論ずる《振り仮名:感-応|カンノウ》の条(デウ)に参(マジヘ)-攷(カンガヘ)て。人の君》
《割書:たる人の、徳の下-民に感(カン)じ。草-木に及(オヨボ)すことをも知(シリ)て。吾気-|順(ジユン)なれば。天-地の気も亦順なる《振り仮名:所-以|ワケ》を弁(ワキマフ)るときには。致(イタシテ)_二》
《割書:中-和 ̄ヲ_一。天-地-位 ̄シ焉。万‐物-育 ̄ス焉の理は。自(オノヅカラ)-明(アキラカ)なるべし。又《振り仮名:往‐昔|ムカシ 》。参(サン)‐|政(セイ)田-沼某-候#1。《振り仮名:深‐夜|シンヤ》卒(ニハカ)に《振り仮名:脇‐肋|ワキハラ》 ̄ノ下 痛(イタミ)て睡(ネムリ)がたく。《振り仮名:侍‐婢|コシモト》を呼(ヨン)で》
《割書:その処(トコロ)を緊(キツク)‐按(オサ)せたりしが。良(ヤヽ)-久くして痛(イタミ)も止(ヤミ)て眠(ネムリ)ぬ。翼(アクル)-|日(ヒ)は故(シサイ)なかりし。そのまゝにして。登 城ありしが。佐-野-某。》
《割書:宿(フルキ)-怨(ウラミ)ありて刺(サシ)-殺(コロシ)たりし。その刃(ヤイバ)を受(ウケ)たる処(トコロ)は。前-夜に痛|を発したる処(トコロ)なりしと。田-沼の家に仕(ツカヘ)し婦(フ)-人の親(シタシク)-話(ハナシ)た》
《割書:りしをきけり。これ身の《振り仮名:衛-護|マモリ》となる気の《振り仮名:欠-隙|スキマ》を生(シヤウ)じた|るところに、破(ヤブレ)を取(トリ)たるにて。この類(ル井)はをり〳〵聴(キク)ことあり。》
音(オト)の耳(ミヽ) ̄ノ-中に来(キタ)るは。琴(コト)にあれ、笛(フエ)にあれ。すべてその《振り仮名:長|チヤウ|ナガキ 》-《振り仮名:短|タン|ミジカキ 》 《振り仮名:高|カウ|タカキ》-
《振り仮名:低|テイ|ヒキヽ》の《振り仮名:律-度|リツド|シラヘノサシガネ 》に 従(シタガ)ひ。その《振り仮名:博-動|ハクドウ|ウチナラスヒヾキ 》をこの気の中へ伝(ツタへ)-輸(オクリ)て。耳底(ミヽノソコ)の
《振り仮名:鼓-膜|コマク》を《振り仮名:圧-打|オシウツ》ものを聴(キヽ)て。これを知(シル)なり。音(オト)を気(キ) ̄ノ-中に伝(ツタフ)ること
は。たとえば水中に石を投(ナゲ)入れば。水に《振り仮名:波-文|サヾナミ》を起(オコ)すが如(ゴト)し
現代語訳
あることであるけれども、多少この気がないものはない。これは非情の物(草木や器物、石金、海山)にもそれぞれに備わっていることで、前条で述べた香気のように、それがこの地上に満ち満ちた気の中に映じて、人の眼の精液の中へ、その色相(形)を現すことは、なお物の形が水底に映るものと異なることなく、すべてこの気の運搬によるものである。
《紅を製造する家の主人が、大いに怒りを発すれば、その時に作った紅の色が必ず変化するというのは、その身体から怒りによって、硫黄を多く発したのに、紅が感応するのである。この事は、巻の二に論ずる感応の条と合わせて考えて、人の君たる人の、徳が下民に感じ、草木に及ぼすことをも知って、我が気が順調であれば、天地の気もまた順調である理由を弁えるときには、中和を致して天地が位し、万物が育つ理は、自ずから明らかになるであろう。また往昔、参政田沼某候は、深夜突然に脇腹の下が痛んで眠りにくく、侍女を呼んでその処を強く押させたが、やや久しくして痛みも止んで眠った。翌日は何事もなかった。そのまま登城したが、佐野某が宿怨があって刺殺した。その刃を受けた処は、前夜に痛みを発した処であったと、田沼の家に仕えた婦人が親しく話したのを聞いた。これは身の護りとなる気の隙間を生じたところに、破れを取ったのであって、この類はときどき聞くことがある。》
音が耳の中に来るのは、琴であれ、笛であれ、すべてその長短・高低の律度(調子の基準)に従い、その博動(響き)をこの気の中へ伝え送って、耳底の鼓膜を圧打するものを聞いて、これを知るのである。音を気の中に伝えることは、たとえば水中に石を投げ入れば、水に波紋を起こすようなものである。
英語訳
However, there is nothing that lacks this ki to some degree. This is possessed by even inanimate objects (plants, vessels, stones, metals, seas, and mountains) in their respective ways. Like the fragrances mentioned in the previous section, these project into the atmosphere that fills this earth, manifesting their colors and forms in the fluid of human eyes. This is no different from how objects are reflected at the bottom of water - it all occurs through the transportation of this ki.
{When the master of a house that manufactures rouge becomes greatly enraged, the color of the rouge made at that time inevitably changes. This is because the rouge responds to the large amount of sulfur emitted from his body due to anger. Considering this matter together with the section on sympathetic response discussed in volume two, when one understands how the virtue of a ruler affects the common people and extends to plants and trees, and comprehends the reason why when our ki is harmonious, the ki of heaven and earth is also harmonious, then the principle that "achieving perfect harmony allows heaven and earth to find their proper places and all things to flourish" becomes naturally clear. Also, long ago, Senior Councilor Lord Tanuma suddenly experienced pain below his ribs late at night and could not sleep. He called a maidservant to press firmly on that spot, and after some time the pain subsided and he slept. The next day nothing was amiss. He went to the castle as usual, but Sano [Masakoto] harbored an old grudge and assassinated him. The place where he received the blade was the same spot that had pained him the previous night, as related personally by a woman who served in the Tanuma household. This shows that the attack succeeded at a point where a gap had formed in the protective ki around his body. Such cases are occasionally heard.}
Sound reaching the ears, whether from koto or flute, follows the rhythmic measures of long-short and high-low tones, transmitting these vibrations through this atmospheric medium to strike the eardrum at the bottom of the ear, which we perceive as sound. The transmission of sound through this medium is like throwing a stone into water and creating ripples.