翻刻
「右帖」
科(とか)は譬に引へき物なしせめて皆々
腹いせに今海に身を溜めんとおもひ
切て見へにけり人々はさ(さ)も思はず我々
迚も同し事何国いか成る所にも舟を
寄せ身のなり果は天命ぞと船中心を
合せけり粮米 纔(はずか)々にして漸始末の
心をかへ粥(かゆ)に煎りて喰水は壱斗に
米弐升廿人にて一日の朝と晩とを
「左帖」
暮しけり斯而西風取るゝとおもへば
又東風にぞ成りにけり何国を日本
我国と当所も浪にへさきを立かへ
跡(あと)の方へと走りけり風少し和らかに
なりければ粮米の便にもと飯の江どに
釣をたれまひき抔を釣り得たり弐
時船ともに大いなる鱶弐本梶の当り
を付け廻る是を釣りて喰にせんと