翻刻
「右帖」
米積かぎを出し苧を付け雪駄の浦皮
引離してゑどに繋ぎなげ入ければ
あんの如くにかゝりけり三四人にて引けれ
共喰たちして力もよわりてつかれ果たる
情力なれば中々引きも上けられず巻戸
にかけて漸に釣上見れば冷敷四尋
計の大鱶也脇指を抜き錨をとき
手に〳〵是を解きはなし味噌も是迄
「左帖」
貯有る煎て喰焼て暫くは是にて
凌けり未水にも事かゞされ共次第に
滅する粮米に生ける心地はなかりけり
早霜月も過き十二月半にも成りぬれ
ば迚更に地方と思ふ所もなく倩
日和になりければ東風吹に西と南の
間なる未申とぞ走りけりなれ共風は
和らかに漂ふ内に水もきれ粮米