翻刻
「右帖」
取つても附かぬ評定也夢路に迷ひし
船なれば十方和かちなかりけり目馴ぬ
草木耳馴れぬ鳥の声何レ日本に
土もかるべし殊に真弓の如く大木の
海の中ゟ生ひたるは覚束ながらてん
まをおろし元船に鏁(かないかり)を入れ千六百石
乗り捨て山に上りて見れば唐葛
生い茂り網を干たる如也何にもせよ
「左帖」
此嶋影に人里こそはござんなれと【注】
南の方に行て人家を尋廻りけり
久敷喰に立ちしゆへ次第につかれ
し人なれば向ひし風に吹戻され
人家と見へしも力なく又二里計ぞ
戻りけり山のたゝすまい磯部の気
色もただならねば嬉しいやら又悲し
さはいか成る魔国に流れ来ておそろし
【注:丸朱印「九大図書館 図書」】