翻刻
「右帖」
炊きまぜて喰はせゝ也勿論 器(うつは)を一ツに
して手 掴(つかみ)みにて喰誠に牛馬を制(せい)し
て門の戸を守れば獄屋に同し身の成
果覚束泪かわく間もなくかゝる身の
成り果とは露しらす父母も床敷嘸
待給わん今日は帰るか明日は又知らせも
有やらんと門に彳み嘸やさぞ妹恋し
妻恋し娘恋し兄恋しと其所(そこ)に
「左帖」
七人爰に五人顔と顔とを付合て銘ゝ
国の恋しさを語り尽さぬ起き伏しの
物に紛るゝ日こそなし斯而此家に来り
て十四五日にも成りければ土地かわりて
水あしく何とやらん心地勝れさる者
多し五人は煩ふて打伏ける中にも
八次郎は四五日之内に終に息(いき)絶(たえ)た
り今年
二十才の若者さへ斯なりけれは四十に余る