翻刻
「右帖」
するも生(いき)るも一所と約せし友朋なれは
様々とわびけれ共不聞入手に手を取て
引出す何国にか連て行いか成るうき
めを見ん事も知らて行身の悲しさ
を先に押立急行死出の別れの悲し
みゟ猶かなしさは増りけり今年十九
の春の夢二月の中とぞ覚へけり是
青柳文八の一子也月まどかなる頃を十
「左帖」
四五日と定めつゝ月無き夕を朔日晦日
の頃かとよ今日や死する事か明日は
何国に連行かと死出の知らせ死後
の待居たり斯而二三日之内に又人来て
藤蔵を望んでつれ行きけり生けすの
魚の如く入用度に取に来る料理成る
やと覚束なく身の毛もよ立つ獄
屋の住居誠にかなしき有様也其後