翻刻
「右帖」
日数十日ばかり立ちける頃幸助才蔵
久次郎松蔵貞次も追々に相果けれ
ば猶も浮世の便りなく夜の目も合ず
月も日も忘れ果たる計也既に死別れ
九人残る者には唯七人天地にも暁
敷いか成る所に行迚も一所にならんと
約束し常々番の者に日本に便りの
船あらば聞かせてたへと頼みける
「左帖」
斯而三月始の頃小船をしつらい水
主梶取拾人計乗り来りて我々不
残乗せ参らせんと呼出たす兼而頼し
事なれば若日本にや渡るかと心嬉し
き追風なればカラガンの津を出帆し
三ッの帆を上げ南を指して走りける
十壱人の友朋をば沙衣婆と冥途
に残し置雲や霞と立ち隔跡を