翻刻
「右帖」
経(へ)たり此春其安否を窺ふ既に
南天竺に漂着して福州の出店
に津船と成り天命の加護(ワ)有てんや
咬■【〈口+留〉の異体字ヵ】陀を経廻して船の内浪(ナミ)の上に
て老にけり水主の独(ヒト)り古郷に帰りし
に相まみゆ手を取つて且祝い手
を打て且かなしむ蘇父浦嶋が帰り
はに異なる玉手箱を取てしば〴〵
「左帖」
成る寝物語なりける暫しとまらぬ
露の世に適々耳に朽(クチ)なんもほいなく
惣耳にとゝまる所を俗談平話の
筆舌にのへて華夷九年録と
号し遥の遊魂吊ふ事しかり
宝暦十三年(未)十月六日より
大正十四年(丑)九月 迠 百六十三年に当る