翻刻
「右帖」
払ひ跡方もなく引て行残る二人は
友なし千鳥天地に伏して親子
兄弟妹背中引離さるゝゟ悲しみ
けり爰に消へかしこにむすぶ水の
泡に孫七幸五郎両人は若や日本に
帰るかと明暮にこそ待居けり此所も
始の気行にて冬の内にも雪ふらず
単物にて寒気を凌春過て夏
「左帖」
来ぬれども単物にて暑を凌所也
斯而同年六月中ならむ小舟をしつ
らい水主四人乗り来り我等を乗
せんと云何角は知らす乗りにけり既に
日数も船中十日計にて小湊にぞ
着にけり爰はソウロクの内にして
在家の様に見へにけり裏の苫屋
に我等二人りを囲置喰事をあたへ