翻刻
「右帖」
を見るに付身の毛も立誠に生きる心地は
なかりける兼而 斬(き)り置し親の首を仏
間に備へ異具を以て吊也我々も定て継(つぎ)
首に成るやとおもひしに日本の首にて継
いてえきなき事か又は神国の首なれば
かゝる無道の継首には切らせし物と神々
の手を取つて引取り給ふか不思議(ふしぎ)や数
日逗留する内に壱人(ひと)りも買人の見へざ
「左帖」
るは誠に不思議の事共也我々二人に仕
形して申けるは此所にあつて益(えき)無(な)し元の
如くソウロクの湊に帰るべき由云ければニ
人りは兼而望みし事なれは天を拝し
地を拝し虎口の難を遁れしとはかゝる
事をや申べしと思はれける斯而右之
浜辺に出しけれは日数も既に十日余り
元来りし国のソウロクの小湊にぞ着に