翻刻
「右帖」
けり以前の家に逗留して薪を(ヲ)取り又は
水を汲て三月き計ぞ暮しけり其内に
近所の町並に娵入りと云事有りけり
さら〳〵帰国の思ひは無し咄の種共思は
ね共/隣家(りんか)と聞て見物す娵に見紛ふ
女三人同道せり左右の肩をぬき顕し
顔には白粉をぬり背中ゟ両の手に(ニ)かけ
て様々なる生け花の匂ひ能きを撰(えらび)
「左帖」
ひて是をくわして首元ゟ手の首迠に
附たり花堂を葺に似たり胸には乳隠
し迚着る也髪はつくねてぬりたる櫛を指し
生け花の色々なるを長く切て指かざし
両の肩の当り迠にたれたり足(あし)には沓を
ふみて暮六つ時ゟ出浮けり跡先に行
男も有りて箱の物抔持運けり挑燈
を持つ物三四人是は魚の鱗にて張たる