翻刻
「右帖」
挑燈なれば常にたゝむ事なし南天竺
の内とかや斯而数日送けるに同年の六月初
の頃大船をしつらいソウロクの小湊にぞ着に
けり宿の主か案内にて我々二人此舟につれ
行けるいか成る国に行やらんと覚束無く
も乗りにけり老若の女八人男二十八人也水
主梶取二十人都合乗り組五十人なり何国
に行共夢心地残りし友の事とへど更に
「左帖」
行えはしれざりき名残おしくも見帰り
〳〵ソウロクの小湊を出にけり女を見れば
枕も上らず泪のかわく隙もなくいか成る
子細か尋ぬれは親をはなし夫に引き分け
遠き国にぞ売に行其人々の心の内
思ひやられて悲しけれ船の喰にはくろ
砂糖黒胡麻の類也斯而日数廿日余りも
過ければ友の幸五郎何とか気分悪敷