翻刻
「右帖」
煩い付き喰事を喰はす色青さめ頼
すくなに見へにけり舟の者共気遣ふて
薬と覚敷煉薬を呑ませ色々助抱
する内に次第に労(よわ)り終に幸五郎は果に
けり適々是迄只二人り親共子共伴ひ
しに岡にも届かず死わかれ夢の心地して
過行方の別れ迠思ひやりつゝ孫七は
わつと計になき出すせめて死骸を
「左帖」
納めんと舟の者に云ければ海に捨てん
と仕形するいとゝかなしくとや角せん
とおもひ岡の方も近きゆへ葬りたく候間
手を添へてと云ければつばきはきして
かふりふる是悲(ぜひ)なく〳〵も壱人して死
骸を肩に岡に上り櫂(かい)にて砂を堀り能き
程に納めて■は船にのり思ひにくれて
孫七は歯をくいしばる血の泪五臓を