翻刻
「右帖」
漂ふて喰に飢え水にかつへて咽糸筋の
如くさながら餓鬼道に苦しみ
ホロネヲの浜にては刀杖弓箭のひらめかし
修羅の太鼓止む時なしカラガンの仮り
屋にては馬盥(ばたらい)の喰を食(く)い死ては浜
に引捨てられ畜生(ちくしよう)ゟ又浅間鋪今度
爰に来りて人間に生を得たる心地こそ
迚語りけり扨七月朔日夕ゟ門と口に
「左帖」
大い成る燈籠を燈(とも)して十三日ゟ盆会
として仏間をしつらい朝夕異具を
備へ豕羊鶴等を備へて聖霊を祭る
とぞ聞へけり扨十五日の夕ゟは寺の内に大い
成る施餓鬼(せがき)棚(たな)を拵へ町中の家々ゟ五升
八升思ひおもいに飯を焼て大いなる
鉢に盛り色々の紙に家々の仏名を
書附け竹の串に指して鉢の飯に指す