翻刻
「右帖」
夕迠に花を生けかへ香焼りて毎日の
参詣あり主人にも親の墓有り父母を
孝心の為とぞ聞へし旧年八月に近町
に主人が一 族(そく)死せり我を家内の働にぞ
遣はされけり棺(くはん)は長壱間にして深さ二尺
厚さ二寸板也渡し二尺五寸にして内に金箔
を敷き其上に蒲団を敷きくゝり枕を
置き四重の衣装を着せ巾着(きんちやく)をさげさせ
「左帖」
煙管(きせる)相思草(たばこ)入れ死人の脇に置き(き)死人は
あをのきに寝させ又上に金箔を置て
蓋をして釘四本にて打附け墓所を
指して舁(かき)出すなり少し地掘つて棺(くはん)を
納め廻りに石を積み白土にてしつくいし
其上は白土にてぬり我朝にてはあこや
とやら申すを瓦葺にて葺き頭を西に
なして埋み西に石塔を向へて立て銘を