翻刻
「右帖」
陸奥と走りけり斯而七月廿日は材木も
揃ひつゝ立ち火の小泊といへるゟ出帆して
順風えいと心よげに帆足を延はして走り
けり湊を離れ拾四五里沖の方へ出し時
何とかわしたりけん飯焼の源蔵帆足に
はねられ櫓ゟうずまく浪に落入ける是は
と舟中立騒き忽ち帆おろし碇を入る筈を
なげ込水竿を流しおよげ〳〵と声をかけ
「左帖」
見れ共浮きし形チも見へす是は■に後れ
しとてんまをおろし漕戻し夫と覚き
浮者も見へす今年十九の秋の草露の
命そはかなけれ跡白波と詮方なく
帆をあげ舟を走り行■離れに舟中
袖をそしぼりけり夫ゟ南部才浦と云
所に着き十日余りも逗留し源蔵が代
りの人を才覚す折に幸貞五郎と云者を