翻刻
「右帖」
血流るゝ事夥しいか成る事やらんと
驚しに又壱人追かけ来ると思へけるか
二丁計りも追掛て是も同しくたを
れけり斯而役人馳来りて鑓よ鉾よ
鉄砲よと得物〳〵を引さげ〳〵川尻
浜手をさがすもあり山手の方に行くも
有り斯而狼藉者〳〵と大声に呼わり
けれは山深くこそ逃入けり常に道無き
「左帖」
山路にて唐葛に足まとひ逃延ひ
難くや思ひけん大木の影にいきをも
つかず忍(しのび)ひ入る追人山路にかゝりけり
谷を狩り峯をさがし漸思ひし所を
見出しけり然れ共数千丈のほき成る故
急々上る事不能皆々鉄砲を揃へつゝ
放(はな)ちければあやまたずほきゟ谷下に落
にけり打捨なから大勢は町内さして