翻刻
「右帖」
引取りける手 負(をい)は二人り共に死して鉄
砲に当りし者は片腹を打通され枝に
しなへて落たりけん二三日も過て山を
忍ひ里を忍びて何国共なく立退し
と也此所黒坊の人をかたらひて商売の
所なれは天竺口も通る事警固せよ
迚言葉を覚けり物の数には一ツをしシヤトウ
二ツをチカ三ツをアンバツ四五をリヤ六ツをアテン
「左帖」
七ツをトシヤヤツトソ八ツをハロヲタラハンダ九ツを
サンカウサンヒイラシ十をサツホロとぞ教へけり
斯而今年も浮世の浪に漂ひて早
十二月大晦日にぞ成りにけり天井に唐ざ
らさの木綿を張り壁(かべ)も右の如く木綿
を張り町並の門と口には大イなる燈籠を
燈し門の戸を閉(とぢ)て祝ひ籠メし儀式也朝
七ツ頃ゟ衣服を改め亭主町内を挑燈にて