翻刻
「右帖」
片足を喰切りけるかなしみさけぶ
声に番人追々馳集り声々に呼はり
けれど町内ゟも大勢出て松明挑燈にて
是を見るに夜中と云声々にさわぎ
しゟホアヤは元の出口を失ひ囲の内に
うろたへ廻りけるを鉄砲矢を放ちければ
とてうる こ(こ)厚くして一矢も通らさりけり
数十人集りて棒にて打なやみ熊手に
「左帖」
掛て是を見れは七尋計ありける眼の
恐敷事云計無し龍のつの無き計也
腹少し赤くして尾先に釼有今迄
此ホアヤ人を害(ころ)せし事なく人是を
害せし事もなし人此ホアヤを害(ころ)せば
脇のホアヤ又人を害すといへり常(つね)に手ざし
もせざりけり今度は已に誤り有つて
川内に流しけれ共わざわひなし足 喰(くい)い