翻刻
「右帖」
持ち運ぶ仲人聟同道都合上下十八人
嫁の方に参りて祝儀調ひけり斯而
嫁之方ゟ送りける品々には衣類の入りし
長箱壱ツ下着壱通り猩々の毛を
附けし笠壱ツくゝり枕六ツ《割書:是二通りの枕也|手枕長さ二尺》
《割書:足の枕長一尺五寸也|何れもぬいの入りし也》等を夥しくはこびけり
扨又嫁は顔を顕して拾二本の簪(かんざし)しを
指ひて銀の櫛金の元結に而髪をゆひ
「左帖」
耳のたれには瓔珞の如きをさげ手足に
金の輪をかけ下女に錦の笠を指かけ
させ歩行の様子誠に菩薩の影向と
思われて当りまばゆき有様也真先に
大蝋燭を燈し挑燈二張にて出浮けり
扨又/聟(むこ)の方には大/蝋燭(らうそく)に火を燈し
半切の如きに米を盛り其中に棹立
町の門と口にぞ出しけり斯而嫁来りし