翻刻
「右帖」
夜は一族は勿論町々の朋友若者も
銘々に壱斤掛け半斤掛けの赤き蝋燭
を持参して火を燈して祝儀をいふ
其蝋燭を嫁の部屋に持行娵を見(み)ん
と成り扨夫ゟ様々成る事をうたひ舞を
してぞ帰りける也主人の妹有り是も
此町に縁付けれ共何れも事同しなれは
出さず者也此国蚊多くして寝間何れも
「左帖」
壱年中は蚊帳を釣り通し也常に匂(にをい)ひ
能き花を蚊帳の近所に釣り置て寝
所に薫(くん)じ渡りける我にも主人ゟ蚊帳
を給り立ちなから出入する蚊帳也大小
皆是に同し事也扨又当秋の頃当
町の唐人二百里計も有けるソロハヤ
と云所に船をしつらい商売に行き
けるに此川に汐かゝりして居たりけるを