翻刻
「右帖」
黒坊の内にても侍い分の役人小舟に
乗り右のかゝり船に行銀の無心抔
云かけけるに銀少し計り遣しとや
かくと申けれは不足にや思ひけん忽
帯せし釼をぬき唐人弐人指殺し
けり残る六人あわで驚き川内に飛入り
けり此船には水主梶取の者十人也
是は皆黒坊ゟの雇いなれはさのみ
「左帖」
さわぎもせずして船に残り居る扨
川に逃入りし者は命限りに人家近く
およぎ寄り山路を指て逃入ける此事
町に聞へければ皆人さわぎ出し山路
を指て尋けり其時孫七も人夫/に(に)
出三日程山を狩りける山奥深く尋入
つて五人は漸尋出しけり今壱人には
決而尋ねあわずして帰りける爰の山