翻刻!九州大学の書物たち

コレクション: 漂流記コレクション

華夷九年録 - 翻刻

華夷九年録 - ページ 66

ページ: 66

翻刻

「右帖」 頼ければ二親有ると空言申て計(はか)らばや と思ひ込み先ツ主人の母親に語(かた)りける 様は我数年御宅に来りて御/憐(あはれ)みに 預り候段安楽世界と存此上や候まし 然れ共我国本には二親あつて我か行え を案じ苔(こけ)の下にもや成りつらんと 思ひ給ふ心の内奉察候得はよるも 寝る事不能此事案し申也今壱度 「左帖」 日本の地に渡り親共の命有らん内に 相まみへたき由泪を流して語りけれは 老母も共に泪ぐみ道利かな尤かな 迚此事老母ゟ主人に語りけるにや 或日主人我れを招き汝日本に帰り度 やと申けり我れ答(とう)て曰(いわ)く日本にては貧(まづ)敷 暮し方仕る者也如斯不便を加(くわ)へ遣ひ 給へは困窮仕る事 塵(ちり)程もあるべからず