翻刻
「右帖」
船に乗せんとて辰の四月十三日金銭数
多/与(あたえ)へ給へはかゝる品を所持せしならば
還而身をや害せんと押しかへせば主人
も是を尤也とて品をかへ壱尺八寸の釼
壱腰与へらる其外は今迄身に添ひし
衣類小道具蚊帳迠残る者もなく
被_レ遣けり家内にも朋友にも今世は
是(これ)が限りとて暇乞(いとまごい)家内も老母も
「左帖」
門と送り情(なさけ)も深き御事にて互(たがい)に袂(そで)を
ぬらしけり泪に曇る水鐘あしわけ
船に竽差(さをさし)して見帰り〳〵阿蘭陀が
元船差して乗りにけり此舟は阿蘭陀
が船には小船也高壱万石を積むといへり
水主梶取七拾余人とぞいへり十四日早
朝に川口を出帆し順風なれば帆数を
上げ昼夜ともなく走りければ海上凡